不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

渦/異形再生/巫女の棲む家/ドラキュラZERO

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び (文春e-book)
 

『妹背山婦女庭訓』の作者、浄瑠璃作家・近松半二が題材、浄瑠璃と共に歩む人生を描く。読み始めてすぐ、コレは危険だぞ…と身構える。文章がうまい。すいすい読めて止まらない。浄瑠璃を与えた家族、切磋琢磨する幼馴染や先輩との情愛なんかの描写が無駄なく並びテンポも良い。亡くなった仕事仲間を偲びつつどん底から這い上がった盛況な舞台小屋で語り合う場面だなんて…グフゥ…無理だろ、泣かされるに決まっている…ブオオオオオオ

(コレは…『エド・ウッド』『ビッグ・フィッシュ』を観た時と似ている…ドラマを組み立てるのがうまいので敬服しきりだが感情を弄ばれている気分になるからティム・バートンはキライだ…)

(あ、ビートルジュースはスキですけどね…)

さておき。浄瑠璃も歌舞伎も仕掛けに力を入れていたエピソード、とりわけ客のいる状態で客席が移動し舞台の一部と化す、観衆と舞台との境界線が曖昧になる装置の話が面白かった。虚構と現実、他人と自分が渾然一体となるあの感覚。と同時に、自分とそうでないものとの違いを否応なしに突きつけられるあの感じ。子供の頃よく味わったわ…もちろん大人となった今でも少ないながらも体験するので「物語」を読み聴き観るのはやめられないんだよな…

異形再生: 付『絶滅動物図録』

異形再生: 付『絶滅動物図録』

 

キマイラ、ケルベロス、ドラゴン等々伝説上の生き物を創り出したマッドサイエンティスト・ブラック博士の伝記と彼の手による生き物たちの精密画が収められている、という体裁で書かれたもの。残念ながらこれはフィクションでありブラック博士は実在しませんが、(もうちょっとだまくらかしてほしかったけど)こういうの良いですよね、大法螺吹きは大歓迎です! 

 「巫女の棲む家」「妖かし蔵殺人事件」の二本立て。「巫女の棲む家」は敗戦直後の東京が舞台、神道を熱心に奉ずるあまり霊媒師に傾倒していく父親、厳格な父親の気を惹くため新興宗教団体の巫女の座に就く少女、その父親に殺される兄と弟、戦時の過酷な記憶を背負ったインチキ霊媒師…設定からして凄まじいなと慄いていたが、本作は作者自身の体験を踏まえていると知り、何となくではあるが納得。妙にリアルな迫力を持った箇所と祈りにも似た美しい幻想的な場面が絡み合っていて…いやまあ読後ぐったりしましたよ(「夏至祭の果て」の方が強かったか…いや同じくらいか…)。

印象深いシーンは多々あるのですが、終盤、偽霊媒師の倉田が神のお告げを途中で不意に止め、正体をばらす。人々の信仰をもっといやらしいやり方で踏みにじる機会もあったはずなのに、あのタイミングでやるのにグッと来た。暗闇の中、懐中電灯で己の顔を照らし出す、まるでイナイイナイバア!みたいな子供じみたやり方も。直後信者たちにボッコボコにされてるもんね。まあベタではありますが、ただただ愚かしくてひたすらにバカバカしい人間の描写が、私は結構好きです。

ドラキュラZERO [DVD]

ドラキュラZERO [DVD]

  • 発売日: 2015/10/21
  • メディア: DVD
 

15世紀に実在したワラキア公ヴラド3世が主人公、オスマン帝国の侵略から国や家族を守るため、奥深い山に閉じ込められていたヴァンパイアから力を得てドラキュラへと変貌してゆくアクションムービー。

男前の串刺し公だなあと最初はのんびり観ていたのだが、ヴァンパイアから力をもらった後くらいからですよ、おやおかしいぞ。代償として三日間の血への渇望を引き受けた筈なのに、た、耐えている…!ええええ!ちょっとの頑張りで乗り越えちゃってる!そんなもんなのか、ヴァンパイアの呪いって…と驚く。まあいいやヴラド公はものすごく意志の強いパパだとしよう、でも…だとしたら…正直なところ…全然面白くない…

ひとつわかりました。ただただ愚かしくひたすらにバカバカしい吸血鬼の存在が、私はかなり好きです。

 

8月のMerry Ghostsライブ

■2020/8/9(日) @難波BEARS
■2020/8/15(土) @茨木アナーキー
■2020/8/15(土) @TOKYO BOREDOM #13 ON AIR FROM CLUB GOODMAN

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