不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

イーアン・ペアーズ『指差す標識の事例 上下』/皆川博子『皆川博子長篇推理コレクション4 花の旅夜の旅 聖女の島』/高木彬光『蝙蝠館の秘宝』

今日も録音の続きをしてきました。写真はカメラ意識してにやにやしてるだけですが。今月はライブがもうないのでしっかりレコーディング進めます! 

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「最近の四冊」 

指差す標識の事例 下 (創元推理文庫)

指差す標識の事例 下 (創元推理文庫)

 

 1663年英国、チャールズ二世復位直後のまだ安定には程遠い時代にオックスフォード大学で起きた毒殺事件。これを四つの章に分けて、ヴェネツィア人の医学徒、亡き父の汚名を返上すべく奔走する法学生、暗号解読スパイの数学教授、そして人付き合いの苦手な若き歴史学者の四人がそれぞれ同じ一つの事件を語る、というもの。

本当に同じ事件のこと語ってんのか?と戸惑うほど、もう全然違う事件に見えてきちゃうんですよ。語り=騙りを最大限に活かした小説だと思います、面白かった!当時の最先端医学(私は現代に生きていて良かった…と震え上がる場面多々あり笑)、オカルト(と当時の道徳・倫理観)、政治の謀略史(暗号の実例が出てきた時はもしや解かないといけないのか…と焦った)、神秘主義錬金術(ここでは恋愛小説の観も)、これらが全部順番に味わえる…何という贅沢な読書体験。語り手が替わるためだと思うのですが、章ごとに異なる翻訳者を立てている!のも贅沢な気分でした。他の著作も読みたい!現在、他に翻訳されているのは『ラファエロ真贋事件』一作だけのようです。もっと翻訳されてほしいな~とりあえずラファエロ探してこよう。 

 「聖女の島」、軍艦島をモデルとした孤島における不良少女更生施設が舞台の幻想ホラー。園長と修道女の関係性は、今となってはすぐに予想がつくものであるからオチというか種明かしの場面に驚きはないのだけれど(解説にも書かれてあったが発表当時はもちろん新鮮であっただろう)、結末で冒頭場面に戻る<時空の捻じれ>のような描写でうっとり…。この部分があることで、本作の箱庭感というか、作り物めいたものというか、可憐なドールハウス的なものが一層強調されている気がします。で、自分だけが美しくもあり醜くもあるこの世界を理解しているのだ、私だけのものよ…うっとり、となるわけですね(多くの読者がそうなってそうですけど)。

全巻読み終えちゃったなあ…装画・装丁も毎回楽しみだった。

 

 「ドラ活、継続中」

高木彬光『黒魔王』が61年ぶりに復刊と聞いて神津恭介を思い出し(『黒魔王』は神津じゃなくて大前田英策と川島竜子シリーズですが)、そういや吸血鬼もどきな怪人が登場する高木彬光の児童書あったよな…吸血蝙蝠だっけ…空飛ぶ魔人とかいたよね…蛇もいたような…アレ?もしかして名探偵ホームズのまだらの紐やらなんやらと記憶が混じってる?とうろ覚えで探す。(だって昭和の探偵・怪奇もののジュブナイル、表紙絵が似てるでしょ…↓)

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名探偵神津恭介(2)蝙蝠館の秘宝 (ポプラポケット文庫)
 

 読むうちにそうそうコレコレと蘇ってきたもののタイトルがどうもしっくりこない…と思ったら、本書は月刊誌「少年読売(少年ジャイアンツ)」昭和25年4~8月号連載時『吸血魔』という題名だったそうで(後に『消えた魔人』という題でも単行本化)、こちらのタイトルでうっすら覚えておりました。

内容は、まあ三つの題名からだいたいご想像がつくかと思いますので述べませんが、仮面に黒マント、吸血鬼の扮装して登場するだけで皆が恐れおののく、ああ…そこはとても優しい優しい世界でした…

 

「Merry Ghostsライブ予定」

10/16(金) @難波BEARS

10/30(金) @堺FANDANGO

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