不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

フェリーニの道化師/吸血鬼サーカス団/ナイトメア・アリー

 先日誕生日を迎えまして44歳になりました。祝いのお言葉を皆さまありがとうございました!この年も元気よくやりたいことを好き放題やっていこうと思います、というかここまできたらもうそれ以外のやり方がわからない…笑

 で、プレゼントに大好きなフェリーニの作品を買ってもらいホクホクしているところです!

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  本作は幼少期サーカスに魅了されたフェリーニ自身が、今や廃れてしまったサーカスの道化師たちを追い求めるドキュメンタリードラマ。取材クルーの様子を見ているとドキュメンタリーの体裁をとったドラマという方が良さそうですが(音声係のお母ちゃんがなんで一緒についてくんの?笑)『81/2』でも見られる、現実と幻想、記憶と記録の間を自由に行き来するフェリーニ節を存分に味わいました。素敵だなあ…。とりわけフェリーニといえば、人物入り乱れあらゆる物が飛び交う祭典の騒ぎというのが真骨頂だと思っているのですが、本作の終盤がまさにそう!老いた道化師がぐるぐる円形サーカス場を走り回り、大砲からは花火、火事になれば道化の消防隊がぶっこんできて、消火活動なのか邪魔してるのかわからないほどの大混乱。混乱を極めたその瞬間に死者である道化師が馬車から現れ宙を舞う…いやもう毎度のことですが、フェリーニの道化師たちへの愛情のデカさに圧倒され飲み込まれましたよ…ここは道化師への愛情だけで構築されている世界(もちろんその後に描かれる切なく美しいラッパのラストシーンも含めて)。失われていくものに対し切なく寂しい気持ちにもなるんですが、やっぱり私はこの作品を観て元気が出てきます。(周りの人は好きじゃなくても)自分が好きなのを自分のやり方で好きだ!と言っているモノに触れると元気が出てくる。この先きっとこの作品も繰り返し観返すことだろうな。

 

偶々ですがサーカス繋がり。探していた吸血鬼映画を入手!

吸血鬼サーカス団 [DVD]

吸血鬼サーカス団 [DVD]

  • 発売日: 2002/07/05
  • メディア: DVD
 

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わあ、牙がめっちゃ長い!今まで見た中で最長かも!

 1971年イギリス・ハマーフィルム作品。先の『道化師』は70年作。この時期「サーカス」が流行っていたのでしょうか?失われていく古き良き時代を「サーカス」が象徴していたんでしょうか。神秘的なものへの畏怖が薄れ、都市伝説的なオカルトが台頭してきた時代に昔を偲ぶ人々の心の現れなのでしょうか…って適当に言ってみたけど。

 1810 年セルビアのシュテッテル村で、少女が次々と行方不明になるが、実は吸血鬼である伯爵の住む城に、彼の愛人である村の女が誘い込み生贄としていたのだった。それを知った村人たちは、城主を殺し城を焼き払い女を追放するも、伯爵から子供の命を奪うという呪いをかけられてしまう。15年後、村は疫病による死者が増え村は封鎖される。そんな折、不気味なサーカス団が村へやってきて…

 サーカス団の正体は、花形の黒ヒョウが殺された伯爵のいとこ(いとこって珍しい設定ですよね)で、座長が15年経ち老いた愛人というものなんですが、このサーカス団、美男美女揃い。座長(と道化の小人)以外10代ちゃうかなと思うくらい若いし。古典的な吸血鬼って(ハマーフィルムの他の吸血鬼モノでもそうですが)わりと大人っつーかオッサンな気がするんですが…子供向けホラーではないってことなんでしょうかね。妙に尺の長いお色気シーンも多いし(怪力男とヒョウ柄全裸女の絡みダンスが始まった時には、まさか『死霊の盆踊り』に突入してしまうのでは…と一瞬不安に笑)、立ち向かう村人たちの戦い方も集団リンチ的でなかなか怖いし、ラストの伯爵が斃れるシーンも、おお残虐!

 基本的に本作は吸血鬼の復讐譚なんですが、サーカスの妖しさ・いかがわしさもあり、可憐な若者の純愛あり、疫病あり、登場人物多めの盛りだくさんで、観てる方からすると中心人物が定まらず散漫な印象は受けました(吸血鬼に全く感情移入できなかった…)が、私の好きな吸血鬼とサーカスがどっちもあるなんてなかなかお目にかかれないですからね、見れて良かったです!

 

そしてもう一つサーカス繋がりで。

 1946年に出版された本作(てことは幼少期のフェリーニが魅了されたサーカスとわりと近いのかもな…作者はボルチモア出身で国は違うけど)主人公スタン・カーライルは、巡回ショー・10フリークショーで働くマジシャン。同じ一座の人妻占星術ジーナと関係をもち、読心術のための暗号が書かれたノートを手に入れ、美しい電気女モリーと組んで詐欺師まがいの降霊術を武器に富と名声を求め世界に乗り出していく。そしてファム・ファタルともいうべき女との出会い、スタンの運命は思いもよらぬ方向へ突き進んでいく…

 現在デルトロが撮影中の『悪魔の往く町』リメイク版の原作である本作は、のっけからギーク、タロット占い、見世物小屋、いかがわしさ満点の世界でデルトロと合いそうだと思いつつ読む。ノワール小説という面ではジム・トンプスンを思い出したりもした。スタンは殺人に手を染めるんですが、犯罪よりも彼自身の絶望感(出口のなさというか強迫観念というか切迫感というか…)が描かれているように思います。

 確か数年前デルトロは『ノスフェラトゥ』のリメイクをすると言っていて、もうそれはそれは楽しみにしていたのですが、いつの間にか違う作品の撮影に取り掛かっているとのニュースを見てショックを受けてました。が、これはめちゃくちゃ楽しみです、公開はいつかなあ。ノスフェラトゥも待ってますね!

 

 以上、最近のサーカス三本立てでした。 

 

 「Merry Ghostsライブ」

■11/3(祝火) @神戸HELLUVA LOUNGE

■11/7(土) @難波BEARS

■11/26(木) @扇町para-dice

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