トム・ホランド『フライトナイト』/ジョン・ランディス『イノセント・ブラッド』/ビンス・ダマート『ヴァンパイアvsゾンビ』
80、90、2000年代のアメリカン・ヴァンパイア・ムービーを1本ずつ。
思春期真っ只中の男子高校生チャーリーはひょんなことから隣家に越してきた男性がヴァンパイアであることを知る。町で起きている殺人事件は隣人の仕業だと悟り、恋人エイミーや友人エドに話すものの相手にされず、警察官にもチャーリーのいたずらだと叱責されてしまう。命を狙われたチャーリーは藁にもすがる思いで、テレビの恐怖怪奇番組のナビゲーター・ヴァンパイアキラーのヴィンセントに助力を乞う。もちろんチャーリーの話を本気にしていなかったヴィンセントだが、向かったダンドリッジ邸で鏡を偶然見、本物のヴァンパイアであることに気づく。友人、恋人を襲われ奪われたチャーリーとヴィンセントは再びダンドリッジ邸に乗り込む…!
ヴァンパイア映画の王道、とても面白かったです。エドが狼から人間の姿に戻る際のSFXもなかなか見応えありましたし(襲いかかろうと走ってくる狼はめちゃくちゃ可愛いハスキー犬でしたが笑)、ダンドリッジが吸血鬼らしく邪悪な存在だったのがとても良かった。小柄でオカルトオタクであるため馬鹿にされがちなエドのコンプレックスをうまいこと利用したり(変身した後のエド役の怪演たるや…切なすぎるやろ…うぅ…上に掲載したジャケットがエドだよ…)、性に興味津々なエミリーをディスコでセクシーに誘惑したり(まあそりゃクラっとくるよね、彼氏のチャーリーはガキんちょだし笑)青春映画の面もあり。老いて自信喪失していたヴァンパイアキラーのヴィンセントが少しずつ踏み出していく感じも良かったっすねえ(むしろ今はこっちにホロリときちゃう…)。
鏡に映らない、招待されないと家に入れない、日光・聖水・ニンニク嫌い、十字架怖い(不信心者のは効かない)等のお約束に加えて、ヴァンパイアの新解釈があったのも面白かった。ダンドリッジは常に果物をむしゃむしゃ食べていたのですが、それはヴァンパイアの化身であるオオコウモリが果実を主食とするからという演出だったそうで*1。
果物と美女の血が好物デス!
【関連作品】
1988年、続編『フライトナイト2/バンパイヤの逆襲』
2011年、リメイク『フライトナイト/恐怖の夜』
2013年、二度目のリメイク『フライトナイト2』
ジョン・ランディス『イノセント・ブラッド』(1992年アメリカ)
悪党だけを狙う女吸血鬼のマリーは、吸血鬼の数を増やさないため蘇生する前に必ず相手を殺害していたが、マフィアのドンであるサル・マルチェリを襲った際、彼がニンニクを好んでいたためとどめを刺すことができず、サルの反撃で怪我を負ったまま逃げることになってしまう。 マリーはマフィアに潜入していた刑事ジョーと共にサルを倒すことにするが、検死のため病院に運ばれたサルは既に吸血鬼になってしまっていた…
タイトルと内容がかけ離れていて驚いた…なんとなく吸血鬼と人間という立場間で苦悩するヒリヒリ度1000%ラブストーリーかと思っていたんですが…いやまあラブコメではありましたが…最後の最後なんて思わずひっくり返りそうになりました。『狼男アメリカン』の監督だから胸が痛い結末だろうと勝手に思い込んでいたワタシが悪いのです笑。そうそう、『狼男アメリカン』にもカーアクションが出てきましたが、本作は車がガンガンゴンゴンぶつかりまくっております、カーアクションの大盤振る舞いです、ジョーへの拷問も車を使っちゃいます、プレス式ゴミ収集車!
だいたい悪役の方に肩入れしがちなワタクシですが、この作品は吸血鬼化したサルが断然輝いておりましたね。皆もきっと好きになりますよ!病院でムクリと起きれば駆け足で脱走、腹心の部下の家に押しかけて生肉を喰らい窓をぶっ壊し大暴れ。ここまででもう既にイイ感じですが、朝日を避けるために逃げ込んだ食肉加工施設の冷凍室で肉塊を枕にして眠る姿に心掴まれ、果ては部下たちを全て吸血鬼に変え、俺がこのシマを支配する!!と息巻くサルに完全ノックアウト。もっと上目指せるでしょ…ピッツバーグの親分で満足するんだ…笑 親しみやすいヴァンパイア・ナンバーワンでした!ラストもなかなかド派手にキメてくれて良かった!
ムニャ
スヤァ…
本作にはホラー界のレジェンド、ダリオ・アルジェント(不自然な救急隊員だなとは思っていた笑)やサム・ライミ(食肉加工施設で働くサルの部下)がカメオ出演、作中に流れる映画にベラ・ルゴシ、クリストファー・リー等々登場してましたね!(ノスフェラトゥもおられましたよね…?)
ビンス・ダマート『ヴァンパイアvsゾンビ』(2004年アメリカ)
本作のあらすじを書くのはとても難しい…とりあえずキャッチコピーの「人類、ヴァンパイア、ゾンビ、種の存続を賭けた最強のモンスターバトル」ではない笑
人に襲いかかり人肉を喰らうようになるという奇病が感染拡大している町、父トラビスと娘ジェナは車で“目的地”へと向かう。車の故障で立ち往生している母娘三人に出会い、姉カミラを預かることとなる(ここはレ・ファニュ『カーミラ』を踏まえてますね)。謎めいたカミラと共に、娘をさらわれた“将軍”と呼ばれる老人と携帯で連絡を取り合いながら“目的地”へとまったりのんびーり彼らは進む。途中でゾンビらしきものに出会ったり謎めいた女性から魔除けをもらったりカミラとジェナがレズビアンの関係になっていたり…。説明(脚本的にも演技的にも)がないので、何のことやらさっぱりわからないままワタシたちは頑張ってついていくしかありません。
突如場面は切り替わり、奇病に感染してしまったジェナを医者に診せるトラビスのシーン。幻想なのか、病で朦朧とした視点による事実なのか、バスルームには惨殺された医者(のマネキン、誰かわからないからワタシたちは更に混乱します)が…!
物語が進むにつれ、吸血鬼のいる世界、ゾンビのいる世界が交互に映し出されていきますが、どっちもポンコツ度が同レベルなので、夢と現実と考えるよりはパラレルワールドととらえた方が良さそうです、多分。なので結末は二つあります!多分!
吸血鬼世界では…トラビスたちは“目的地”であろう元修道院の廃墟にたどり着き、諸悪の根源であるカミラの死体に杭を打ち込むという作戦を遂行するものの、棺を開けたところでトラビスと将軍は味方であったはずのジェナとカミラに殺される。そして彼女らは廃墟を後にする。
ゾンビ世界の結末は…奇病が進行し隔離病棟に幽閉されていたジェナは相思相愛の看護婦カミラと共に病院を脱走しモーテルに隠れるも、町に大量発生していたゾンビたちによって二人とも喰いつくされてしまう。
吸血鬼世界の方は、同性愛という新しい人生を踏み出すジェナの自立、つまりエディプス・コンプレックスからの脱却を父親トラビスを殺すことで表しているのではないか。そして二人で手に手を取り合って生きていこうとするものの、偏見や差別に満ち満ちた世間に二人の生まれたばかりの瑞々しい愛は蝕まれてしまった…ゾンビ世界での結末は非情な世間の目というメタファーとして読み取れはしないだろうか。
ハイ、テキトーなこじつけですね。まあ何言っても大丈夫なくらい、本作は余白たっぷりというか無の空間、隙間だらけってことで!どんな想像も受け止めてくれます!笑
そうそう、本作はヴァンパイア・ムービーというよりはゾンビ映画だと思います。きっと監督はヴァンパイアよりゾンビの方が好きだわ…だって、ラストでジェナとカミラがゾンビに襲われる場面はポンコツなりにもゴアな雰囲気を醸し出しているんですよ。写真は載せないけど。それに比べて、ヴァンパイアとなったガソスタ店員が男性客に牙を剥き咬みつくシーンはコチラ。
あれ、牙がない
咬む前から目を閉じている…すごく嫌そう…こんなヴァンパイア初めて見たわ…笑
あ、あとね、魔除けがね…ってキリないからここで終わりマス!楽しいシーンが山盛りな映画なので是非皆も観てみてくださいね!
*1:「フライトナイト」 Fright Night (1985) : なかざわひでゆき の毎日が映画三昧こちらの記事に指摘がありました