不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

ホイットリー・ストリーバー『薔薇の渇き』『ラスト・ヴァンパイア』

 今回はコチラの原作の続編について。

ハンガー [DVD]

ハンガー [DVD]

  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: DVD
 

 トニー・スコット『ハンガー』(1983年・イギリス)

ホイットリー・ストリーバー『薔薇の渇き』(2003年・新潮社)

 本作が映画『ハンガー』の原作。カトリーヌ・ドヌーヴが長命の女吸血鬼ミリアムを演じ、恋人のジョン役にはデヴィッド・ボウイ、愁いを帯びた美しさを振り撒いとりましたよね…うっとり…私の永遠のアイドル…てのはおいといて、内容はほぼ映画と同じです。180年ほどで急激に老い始めたジョンを失うのではないかと恐れたミリアムは、老衰学の医師サラに接近し自身の血の秘密を探ろうとする…というものですが、ラストは違います。カトリーヌ姐さんが、いやミリアムが消滅するだなんてあるわけないっしょ!

 で、続編がこちらになります。

 ホイットリー・ストリーバー『ラスト・ヴァンパイア』(2003年・新潮社)

 新たな伴侶を見つけ子を宿すべく、タイで開催されるヴァンパイア集会に出かけたミリアム。会場に着いた時には既に仲間は全滅させられていた。危険を察知した彼女は慌てて逃亡を図るも「食事」をし立ち去る際に証拠を残すミスを犯してしまう。一方、逃げた吸血鬼の存在を知ったCIAヴァンパイア捜査班のポールは、仲間への警告に向かったミリアムをパリへと追う…

 ちょっと待てCIAって何だそれは、と面喰らいますが、どうやら執筆までに前作から20年経っているせいか作品世界も20年後という設定のようです。各地に隠れ住んでいる仲間がいるとかいろいろと設定が変わっているのにも驚きましたが、まあ最大の変化はミリアムの伴侶への好みでしょう。自分たちを狙い追ってくるポールをいつしかミリアムは「運命の男」だと愛するようになるんですよね…。ポールってのはCIA対ヴァンパイアチーム・百戦錬磨のリーダーでして、命を懸けた戦いの重圧を酒と女で紛らわすマッチョマンなんですよ。私の脳内ではジェイソン・ステイサムがポール役です。

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ハイ、『エクスペンダブルズ』からスタローン先輩と並んでどうぞ!

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前の伴侶はジョンだったんですよ、ボウイですよ。腕の太さがさっきと全然違う…

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もちろんジェイソン・ステイサムも格好良いですよ!運動神経抜群だし!

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でもジョンとタイプがあまりにも違いすぎて驚きましたねえ…ミリアム姐さん…

 そういえばガラっと男の好み変わっちゃう女友達いたな…どっちのタイプとも良い感じで付き合っていたよな…それって懐が深いってことよね…と思い起こせば、本作のミリアムは何とも人間臭く感じられる。さらにベテランの吸血鬼らしい超然としたたたずまいではなく、非常に自己中心的で周囲の者たちを振り回す彼女は(まあ前作から強引、我儘、移り気…そんな性格ではあったけれど)、いやはや魅力的。

 また、本作でミリアムは吸血鬼としての強さを持っているものの(超人的な運動神経や回復能力等々)、日々進歩する武器を手に人海戦術で攻めてくる人間相手に劣勢を強いられます。全体を通して彼女の弱い部分が描かれるものですから、ますます親近感が湧くというか、次第に吸血鬼モノを読んでいるというより、従来の価値観が通用しなくなった現代社会で孤独ながらも誇りを保ちつつ恋に仕事に生きる大人女子の奮闘記、にしか見えなくなってきたというか…ミリアム、ファイト!!

 ミリアムとポールはどうなるんだろう、まあポールは容易く誘惑されてたけど…と迎えたラストは修羅場。ポールを奪還しにCIAの女部下がミリアム邸へ乗り込んできて銃をぶっ放し、ミリアムを守ったサラは撃たれてしまいます、鋲だらけの弾…うわああ。助けられたポールは女部下への愛に目覚め(オイこら待て)ミリアムは逃亡。

 まあ第3巻があるので本作はこの終わり方で良いんですが(邦訳出てないので是非ともお願いします!ミリアムの息子が主人公らしいじゃないですか!)、ポールにがっかりしながら本を閉じた次第です。結局ミリアムの生き方は受け入れられないのか、チッ。銃をぶっ放し日陰者として生きる女部下のいわゆる「はみ出した」生き方はOKなのにね。

 傷心し怪我を負って逃亡するミリアムの表情は全く描写されていなかったけれども、

“現代の人間社会って許容範囲が狭いのね?あなたはどう?どこまで行ける?”

我々に向かって、ミリアムは牙を剥いているように思えてならないのです。

 

 続きが読みたい…!!!ミリアム姐さんの第三の伴侶はどんなタイプ???