不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

デヴィッド・クローネンバーグ『ラビッド』

 TSUTAYAのホラー棚で一枚ずつめくり、パッケージに“吸血”の文言見つけて借り出した1本。吸血って書いてんだからヴァンパイアムービーに違いない。そうだそうだ、そうに違いない!

 ※本作を観ながら途中ガッツポーズを決めるなど完全に偏った見方をしております(多分そんな映画じゃない)予めご了承下さい。

ラビッド [DVD]

ラビッド [DVD]

  • マリリン・チェンバース
Amazon

デヴィッド・クローネンバーグ『ラビッド』(1977年・カナダ)

(あらすじ) 交通事故で人工皮膚の緊急手術を受けたローズは、腋の下に出来た器官を使って人を襲い血を吸うようになる。被害者にあらわれる狂犬病のようなその症状は、彼らが人々を襲い噛み付くことで次々と伝染していく…。

 

 何で脇の下?という大いなる疑問を抱えつつも、長編二作目でありながら、吸血器官の外観はもうクローネンバーグでしかない。三つ子の魂百まで。(画像は載せませんが「イグジステンズ」(1999)の脊髄にケーブル挿し込むズブズブ感が既にありましたよ)

 ローズに吸われた人々の症状は狂犬病に喩えられていますがどう見てもゾンビ。人間性が失われ見境なく人々に襲いかかる姿はまさにゾンビ。

f:id:kano-trespass:20211120023156j:plain

 ね?緑色の泡吹いてるし。

(別に私はゾンビが嫌いなわけではありません、念の為)。

 

 発症した人々の顛末をカメラは逐一追っていきますので、次第に感染パニック映画を観ている気分になってきます(モントリオールの街はロックダウン、ワクチンパスポートの導入等々現代にも通じる点多々有り)。発症した人々は射殺されゴミ収集車によって回収、治療ではなく排除あるのみという殺伐とした世界がクローズアップされていきます。

吸血鬼映画でひとりドリーミーな気分に浸るはずだったのに…
ああこれは吸血鬼映画じゃないんだ
現代医療への警鐘を鳴らすゾンビ映画だと捉えた方が良いかもしれない
(別に私はゾンビが嫌いなわけではありません、念の為)
と諦めかけた終盤。ローズがのたもうた!

f:id:kano-trespass:20211120022634j:plain “私には血が必要なのよ”

よっしゃーー!!キターー!!主役がそう言ってるんだからこれは紛れもなく吸血鬼映画だ!!負けるなローズ、今から(あと10分もないけど)吸血鬼映画として巻き返してくれッ!!ゾンビなんてぶっ飛ばせッ!!

(別に私はゾンビが嫌いなわけではありません、念の為)

 

 ローズは自分が感染源であることをこの時知ります。手術のせいでおいしそうなステーキサンドも点滴も受け付けない身体になってしまったローズ。空腹を抱え街をうろついていた憐れなローズ。親友を襲うまいと吸血の誘惑に必死で抵抗していたローズ。そして彼女は忌まわしい己の存在に決着をつけるため自身をゾンビ化した男に襲わせるという最期を迎えます。

 願わくは吸血鬼として新たな人生を歩んでほしかった…悲しい…しかもゾンビにやられるなんて…(フンッ、ゾンビなんて嫌いだね)。哀しい結末ではありますが、ローズ役のマリリン・チェンバースが不安や恐怖に苛まれながらも獲物を誘惑するセクシーな演技が可憐でとても素晴らしかった(調べましたらマリリン・チェンバースは往年のハードコアポルノ女優だそうで、なるほど、あの悩まし気な表情に納得!でした)。吸血鬼という存在の儚さ・切なさに身悶えしたい方、必見です!是非!

f:id:kano-trespass:20171127183350j:plain