新刊を読む楽しみ/文庫本再読の愉しみ
最近購入した本の感想メモ。
この島にいるのは、ふたりの老女だけ
朝鮮との国境近くの島でふたりの老女が暮らす。
九二歳と八八歳。
厳しい海辺暮らしとシンプルに生きようとする姿!
傑作長編小説。(作品紹介より)
老女を書かせたらぶっちぎりでナンバーワンだと思う作家・村田喜代子の新作(っとちょっと待てよ、イサベル・アジェンデも魅力的な婆さん書くしな…まあどんなババアが好きでどう年を取っていきたいかなんて話題は長くなるからとりあえずおいとこう)。紹介文を見てこれは村田節炸裂ではないだろうかと期待して読む。詳しくは述べませんが、やっぱりちゃんと出てきますよ、ああこういう台詞を吐いてみたいな、と思う名言・名場面が。
境界線なく幻想世界と現実が繋がる作者独特の世界を今作でも堪能。時化の中、沈む船から逃れようとイソシギへと変身した漁師たちの話、いやあ圧巻でしたねえ。と書くとファンタジー小説かと思われそうだが、さにあらず。
現代に生きる我々(の世代)の多くが抱えているであろう問題を突きつけてくるのが村田節。今回は日本の国境(領土問題)、地方の過疎化、高齢化した祖父母・親と子世代の関わり、さらに死とどう向き合うかを取り上げている。こう羅列するとなんだかお堅い上に説教くさい(で、そういうのは大体薄っぺらい)ものと間違われそうで嫌ですが…。この現実社会の地面をしっかり踏みしめつつ、力強い想像の世界を私たちに見せてくれる作者の力量に今回もまた脱帽したのでした。
既に単行本を持っていますが、せっかく文庫化されたのだから読み返すかと購入して正解!初読の際には気付かなかった、掌編小説「向日性について」に描かれる郷愁の美しさを発見。郷愁なんて手垢にまみれたテーマを、山尾悠子は彼女の気高さ保ったまま、一文いやそれより短いフレーズで完璧にキメてくるんですからねえ。ちなみに、
曲がっても曲がっても白昼の土塀が続く町では、走り去る猫だけが目覚めている。
このくだりで、私は思わずブフォっとむせながら慄きました。完璧じゃないか…
まあでも前後があっての完璧ですので、是非読んでください。そして一緒に心震わせましょう。そうしましたら、この世に無限とある美しい郷愁の場面について喋りましょう。スティーヴン・ミルハウザー「空飛ぶ絨毯」のラストシーンとかどうです?
さて。今週末はMerry Ghostsライブあります!
遊びましょう!
■3/22 fri @心斎橋HOKAGE
MONSTER RAINAOW
サガシュウ(高知)
アナログエイジカルテット
krzywy las
Merry Ghosts
open 19:00 start 19:30 adv 1500 door 2000