不思議なコーラ

trespass/Merry Ghostsでドラムを叩いているカノウのブログ

フラン・ルーベル・クズイ『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』

 秋の夜長にヴァンパイア!

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フラン・ルーベル・クズイ『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』(1992年・アメリカ)

 スレイヤーとして選ばれし女子高生バッフィが吸血鬼をやっつけるホラーコメディ。80年代ファッションが色濃く残る92年公開の本作、軽い気持ちで見始めたけれどなかなか良かった。強すぎる特別なワタシは嫌!皆と同じ可愛い女子でいたいけど…でもアナタにとっての特別な女の子になりたいのと揺れ動く乙女の心理。あ、コレって『YAWARA!』じゃん。

 本作のヴァンパイアたちも良かった。ボス役がルトガー・ハウアー様であらせられるのも堪らん。(『ドラキュリア3』で邪悪な吸血鬼の最終形態を演ぜられ、ダリオ・アルジェントの『ドラキュラ』では敵役のヴァン・ヘルシングとしてカマキリ・ドラキュラに立ち向かう…ヴァンパイアムービー界のVIPと言えましょう!)

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 ヴァイオリンを奏でつつダンスをしたいと優雅に宣うヴァンパイアのロトス。良いわあ似合うわあ。もちろん『ブレードランナー』『サルート・オブ・ザ・ジャガー』等のストイックな姿も素敵ですが、ちょっとレトロなほんわかルトガーも最高…!

 部下役のポール・ルーベンスの絶命シーンも相当味わい深かった。あれ?倒れない?杭が効かない?あ、倒れたわ…ってこんなヴァンパイアの最期は初めて見た。

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 血糊一切無しのハンデをどう克服するか…ってことで生まれた演技なのか?

 噛みつき場面や流血も無し、ワイヤーで結構吊るされているもののまったりと進むアクションシーンだらけな作品ですので、ホラームービーの緊張感はゼロですが、少女の成長に一役買う心優しきヴァンパイアに親近感抱きつつ観てください。90年代アメリカンカルチャーが好きだった大人にぴったりな1本です!

ジェス・フランコ『キラー・バービーズvs怪人ドラキュラ』

 数多くの吸血鬼を撮っている監督にも関わらず先日初めて観たジェス・フランコ『キラー・バービーズvs怪人ドラキュラ』(2002年スペイン)

キラー・バービーズ VS.怪人ドラキュラ [DVD]

 吸血鬼ドラキュラが人気パンクロックバンド・キラーバービーズの演奏を聴いたことで現代に甦る。ドラキュラは悩殺ボーカリストのシルヴィアに焦がれ、彼女を取り巻く人々に襲いかかる…!

 

 情報量少なすぎるが故に頭フル回転でした。夜のはずなのに画面は明らかに昼間というのが多くて…かと思えば実際の夜のシーンもあったりするので、作品内の時間軸とか非常に混乱します(笑)

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ああドラキュラが日焼けしそうだ…

 

 時間といえば、主演のバンド・キラーバービーズが一曲フルで演奏していたのには度肝抜かれましたね。長っ。5分26秒もあったよ。本作85分しかないんですがね。(デ・パルマボディ・ダブル』内の“リラックス”だって4分7秒だったゾ!計っちゃったヨ!)

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 舞台の遊園地のオーナーで富豪のおじいちゃんモルガン氏がかなり素敵だったなあ。彼もまたシルヴィアを愛しており、バンドのパトロンとしてちょっかいをかけますが、大体シルヴィアに罵られる。そうだ、俺は下劣だ、とモルガンさんが内省しますと、場面が切り替わります。

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え?ミュージカル?え?バックダンサーのオネーチャンたち、誰?
 今何の映画見てるんだっけ?と戸惑う程に作品をぶっ壊してくる強烈な彼の内省場面は全編通して結構な頻度で出てきます。そして癖になる(笑)


 偽ドラキュラと対決するのも良かったなあ。偽者はクリストファー・リーのような王道二枚目の風貌。対して主役のドラキュラはノスフェラトゥを想起させる坊主系。対決は坊主系ドラキュラの圧勝!いいねいいね!まあこれは私がノスフェラトゥ贔屓なだけですが。

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うん、カッコイイけど偽者だよね

 

 キラーバービーズのライブを聴いて蘇ったドラキュラは、引き寄せられるようにライブ会場にやってきて、最前列でウットリ…。この場面が個人的にとても良かった。
ステージを憧れの眼差しで見つめ、高揚するあまり演奏中に乱入、しかもリズムの取り方が一人だけぎこちなくおかしい。

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めっちゃ楽しそう

 

 あれ?ちょっと待って…コレ私そのものじゃないか…乱入は(ギリギリ踏み止まって)しないけど…うーんコイツはかなり等身大のドラキュラだな…すぐ仲良くなれそうだ…

 そういやロックミュージックとの取り合わせで吸血鬼が観客の一人ってのも珍しい気がします。大抵は逆のような…。『インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア』の続編『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』のレスタトはロックバンドのカリスマボーカルだし、ジャームッシュ『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のアダムは覆面とはいえ超人気ミュージシャンだし(雲の上の存在めいた孤高の吸血鬼なんですよ、キャー格好良い!)

 てなわけで、また新たな吸血鬼と出会いました。やったね!
ストーリー的にはドラキュラが閑散とした炎天下の遊園地内をウロウロしているだけの本作、オススメ度は低いですが…私にとってはなかなか素敵でした。ジェス・フランコもっと観なくては…!

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